【東京・竹橋】東京国立近代美術館 下村観山展とMOMATコレクション

下村観山展 美術館

東京国立近代美術館で開催中の「下村観山展」と、MOMATコレクションを鑑賞してきました。
下村観山展は初期から晩年までの作品を一度に見られる充実した内容で、MOMATコレクションとあわせて半日ほど楽しめます。

見どころや展示の感想、所要時間や館内の様子までまとめています。

見どころ(下村観山展)

下村観山は能楽師の家に生まれ、橋本雅邦に師事しました。
その後、岡倉天心とともに日本美術院の設立に参加し、近代日本画の発展に大きく関わった人物です。
本展では約150点の作品を通して、伝統技法の習得からイギリス留学を経た表現の変化、そして画壇を牽引する存在へと成長する過程を見ることができます。
また、渋沢栄一らとの交流も紹介されており、作品制作の背景まで理解できる構成になっています。

MOMATコレクション(内容・フロア構成)

2Fから4Fでは、国内最大規模の所蔵作品展「MOMATコレクション」が開催されています。
19世紀末から現代までの日本美術の流れを、海外作品も交えて紹介しており、約200点がテーマごとに展示されています。

■4F(ハイライト・1900s~1940s)
ポール・セザンヌの《大きな花束》から、村上隆の作品まで、約10年刻みで並び、美術の流れを一望できます。

■3F(日本画・1940s〜1970s)
1940年代から1970年代にかけての作品が展示されており、戦前から戦後、高度経済成長期に至るまでの時代の変化を感じることができます。

■2F(ギャラリー4・1970s~Today)
大型作品が多く、現代ならではの多様な表現を楽しめます。

展示の感想(下村観山展)

許由/十六羅漢 第二尊者|下村観山|所蔵:横浜美術館(入江宏氏寄贈)

許由/十六羅漢 第二尊者|下村観山|所蔵:横浜美術館(入江宏氏寄贈)

最初に展示されていたのは、11歳の頃に描いた模写作品で、その完成度の高さに驚かされました。

雨の芭蕉|下村観山|所蔵:個人蔵

雨の芭蕉|下村観山|所蔵:個人蔵

続いて展示されていた17歳の作品では、葉の間で雨宿りする雀の描写が印象的で、幼い頃から優れた観察力と表現力を備えていたことが伝わってきました。

稚児文殊|下村観山|所蔵:飯田市美術博物館

稚児文殊|下村観山|所蔵:飯田市美術博物館

三人寄れば文殊の知恵で知られる文殊菩薩が、可愛らしい子どもの姿で描かれていました。
そばにいる獅子もくつろいだ様子で、穏やかな雰囲気が印象に残ります。

旅券|下村観山|所蔵:神奈川県立歴史博物館

旅券|下村観山|所蔵:神奈川県立歴史博物館

留学に関する資料として、当時のパスポートも展示されていました。
作品だけでなく、実際に海外へ渡った記録を見ることで、観山の活動の広がりをより具体的に感じることができます。

雨中鷺|下村観山|所蔵:茨城県近代美術館

雨中鷺|下村観山|所蔵:茨城県近代美術館

イギリス留学から帰国後、観山は木々を墨のみで表現した作品を多く手がけています。
展示解説にもあるように、墨の使い方や構図の変化から、留学で得た影響が表れているように感じました。

三聖之図|下村観山|所蔵:東京国立博物館

三聖之図|下村観山|所蔵:東京国立博物館

キリスト・釈迦・孔子という異なる思想の象徴が一つの画面に描かれており、豪華な組み合わせが目を引きます。それぞれの人物が並ぶ構図から、観山の幅広い視野や表現の広がりを感じました。

唐茄子畑|下村観山|所蔵:東京国立近代美術館

2枚の屏風に描かれた作品で、猫の視線の先にカラスがいる構図が面白く感じました。
猫の位置から実際に見えているのか、想像しながら楽しめる作品でした。

魚籃観音|下村観山|所蔵:西中山妙福寺

魚籃観音|下村観山|所蔵:西中山妙福寺

モナ・リザを意識して描かれた作品で、目が合うように感じるのか思わず試してみたくなる作品でした。

三猿/虎渓三笑|下村観山|所蔵:横浜美術館

荘子|下村観山|所蔵:三渓園

荘子|下村観山|所蔵:三渓園

下村観山は、実業家の原三溪と深い関わりがあり、三渓園を拠点に制作活動を行っていました。
その背景もあり、本展では三渓園をはじめ、神奈川県立歴史博物館や横浜美術館などに所蔵されている作品が多く展示されています。
所蔵先の名前を見ながら鑑賞することで、当時の交流の広がりや作品背景への理解も深まりました。

会場では単眼鏡を使っている来館者も多く見られました。最初は必要ないと思っていましたが、筆の細かな表現を見たくなりレンタルしました。
実際に使ってみると、肉眼では分かりづらい筆使いまで確認でき、より深く作品を楽しむことができました。

展示数は非常に多く、観山展だけでも約2時間ほどかかる見応えのある内容でした。

MOMATコレクションの感想

■4F(ハイライト・1900s~1940s)

Hormless kitty|奈良美智

Hormless kitty|奈良美智

横浜美術館で見た際に、見る角度によって顔の印象が変わるのが面白く、記憶に残っている作家でした。

第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神|Henri Rousseau

第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神|Henri Rousseau

無審査で誰でも出品できる「アンデパンダン展」に関する作品も展示されていました。
作品の中には、自由の女神が空を舞い、多くの画家が集う様子が描かれていました。
ライオンも登場していて、自由な雰囲気がより強く感じられました。

静舞|五姓田芳柳

静舞|五姓田芳柳

幕末には横浜で外国人向けの土産用の絵を描く工房を構え、明治時代になるとリアルな肖像画で名を馳せました。
当時の写実的な表現の高さが感じられました。

■館内設備

眺めのよい部屋からは皇居東御苑周辺を見渡せ、休憩にも適しており、情報コーナーではタッチパネルで展示作品を検索できます。

■3F(日本画・1940s〜1970s)

Sol Lewitt|ウォール・ドローイング#769

4Fから続く吹き抜けの壁面にも作品が展示されており、空間全体を使った見せ方が印象的でした。
下に降りると、方程式のような図解があり、作品の理解を深める工夫がされていました。

鶴氅かくしょう|平櫛田中

日本画のコーナーでは、東京美術学校の初代校長である岡倉覚三(天心)をモデルにした作品が展示されていました。観山展とあわせた構成だったのかもしれませんが、関連する人物についても知ることができ、印象に残りました。
また、畳を用いた椅子が設置されており、作品の雰囲気と調和した落ち着いた空間になっていました。

■2F(1970s~Today)

大型作品が多く、スケールの大きな表現を楽しめるフロアでした。

4Fの時点で閉館まで残り30分ほどとなり、3F以降はやや駆け足での鑑賞となってしまいました。
そのため、下村観山展とあわせて見る場合は、午前中からの来館がおすすめです。MOMATコレクションのみでも十分に楽しめる作品数がありました。

アクセス・所要時間・館内の様子

アクセス
東京国立近代美術館は駅からのアクセスも良く、比較的訪れやすい立地です。

  • 竹橋駅:徒歩約3分
  • 九段下駅:徒歩約15分

所要時間の目安

  • 観山展:約2時間
  • MOMATコレクション:約1.5時間
    → 合計3〜4時間ほどあるとゆっくり鑑賞できます。

館内の様子

休日はやや混雑しており、作品前には人が集まりやすい印象でした。順路にこだわらず空いている場所から見ていくと、スムーズに鑑賞できました。

周辺スポット

九段下駅からは、北の丸公園を通って東京国立近代美術館へ向かいました。
途中には、登録有形文化財である九段会館があります。
昭和9年に建てられた建物で、洋風の外観に和風の瓦屋根を組み合わせた「帝冠様式」が特徴的です。

さらに進むと、日本武道館の屋根が見えてきます。

その先にあるのが、重要文化財の旧江戸城清水門です。
江戸城は15世紀に築かれ、徳川家康の居城として整備された城で、清水門は17世紀に建てられたとされる歴史ある遺構です。

門のやや緑がかった色合いや重厚な造りから歴史を感じられ、門を抜けた先の石段は一段ごとの高さがあり、見た目以上に歩きごたえがあります。

近くには、星が散りばめられたような外観が印象的な科学技術館もあります。

紀伊国坂を下ると美術館が見えてきますが、この周辺はかつて紀伊徳川家の屋敷があった場所に由来しています。

帰りは神田神保町を通り、秋葉原駅まで歩きました。
みなとみらいと同じ名前の「さくら通り」もあり、桜の木は見当たりませんでしたが、マンホールには桜のデザインが施されていました。
通り沿いには多くの書店が立ち並び、「本の街」と呼ばれる雰囲気を感じることができます。

万世橋周辺にある万世橋駅跡も見ることができ、夜にはライトアップが美しく、散策の締めくくりにおすすめです。

ちょこっと休憩

明治創業の老舗そば店、「かんだ やぶそば」で、ざるそばと夏野菜の天ぷらをいただきました。
そばつゆはやや濃いめに感じましたが、蕎麦湯を加えるとまろやかになり、最後まで美味しく楽しめました。
夏野菜の天ぷらは、特に葉付きのしょうがが、風味よく美味しかったです。

メニューはシンプルで価格もやや高めですが、店内では店員さんの「いらっしゃいませ」や注文の掛け声が特徴的で、長い歴史の中で受け継がれてきた雰囲気を感じることができました。

お店
かんだ やぶそば

まとめ

東京国立近代美術館では、下村観山の回顧展とMOMATコレクションを通して、日本美術の流れを幅広く楽しむことができます。
観山展では、伝統的な日本画の技法に加え、留学経験を経て発展していく表現の変化をたどることができ、見応えのある内容でした。また、2Fから4FにわたるMOMATコレクションでは、近代から現代までの作品が体系的に展示されており、時代ごとの美術の流れを感じることができます。
展示数が多いため、両方をじっくり鑑賞する場合は、時間に余裕をもって訪れるのがおすすめです。

周辺には歴史的なスポットや散策コースも多く、美術鑑賞とあわせて楽しむことで、より充実した一日を過ごすことができます。

基本情報

東京国立近代美術館

【会期】
下村観山展 2026/3/17〜5/10
MOMATコレクション 2026/3/3〜5/10

【料金】
下村観山展+MOMATコレクション(共通券)
一般 2,000円
大学生 1,200円
高校生 700円

MOMATコレクション(所蔵作品展)のみ
一般 500円
大学生 250円
※国際博物館の日(5月18日)・文化の日(11月3日)は無料
(※休館日の場合を除く)

【営業時間】10:00〜17:00
(※入館は閉館30分前まで/変更の場合あり)
【休館日】月曜日
(祝休日は開館し翌平日休館)、展示替期間、年末年始


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